薬袋善郎先生は英語リーディング教本などの著作で有名な英語講師です
個人的には,薬袋先生は文法解説・内容理解の面で最も信頼できる英語講師の一人だと思っています.
その薬袋先生が2020年3月にミル自由論の解説本を出版されました.英文のあらわす「ことがら」を正確に理解することを目的に,ミル自由論第一章前半を文法的・文脈的に隅々まで解説しています.その徹底ぶりはすさまじく,数年かけてイギリス人のネイティブ(哲学の博士号持ち)の方に疑問点を逐一確認し,議論した上でミル自由論について隅々まで理解したのことです.第一章の途中まで解説した時点で原稿が書籍1冊分になったとのことですが,可能ならば全文を解説した決定版を出していただきたいと思います.
私も通読させていただきましたが,下記の部分についてはあまり深く考えていなかったため,自分の読みの浅さに気づかされました.(ただし前者の解説には少し疑問点があります.)
"A similar tone of sentiment might by this time have been prevalent in our own country,"の部分でミルの書き間違いの可能性が指摘されている部分(1-3-04)
"a mere appeal to X"の複数の意味について指摘された部分(1-6-02)
他にも学習者が躓きそうな部分について非常に詳しい解説がされているので,洋書に挑戦したい方・英文を正確に読めているか不安な方だけでなく,正確に英文を読めていると自信を持っている方にもおすすめです.
完成度の高い書籍ではあるのですが,何点か疑問に思う点があり,いくつかの記事にまとめました.
■疑問①
譲歩節"whatever precautions might be taken"のmight
■疑問②
subject=the effect of customの「対象」?
■疑問③
過去の反実仮想(叙想法過去完了)に対する現在の事実に反する帰結でmight+動詞の原形は不自然?
■疑問④
"This (it might seem) was ..."の"it might seem"は「誰に」そう見えるかを表しているのか?
適宜追加削除等修正します.